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日本発売前のプロトタイプを試乗!スズキ初のEVはなんとSUVだった![スズキe ビターラ]
「e ビターラ」は、スズキ自動車がこの7月に欧州で先行発売する新型SUVだ。日本でも年内に発売予定になっているがまだ日本版の詳細は未定。だが今回、発売前の「プロトタイプ」を実際に試乗する機会を得た。いったいどんなクルマなのか興味津々だ。
(※あくまでプロトタイプなので実際の発売時には様々な内容変更があります。)
スズキ初の電気自動車はSUVだった!
発売前のプロトタイプをさっそく調査!
なんといってもトピックは、このe ビターラはBEV(ガソリンを使わず電気だけで走行するバッテリー駆動のEV=電気自動車)であること。そしてスズキとしては初のBEVであることだ。
それだけに期待感が高いことは言うまでもない。
正統派SUVのスタイリング(電気自動車っぽくない?)
車格としては、BEVではないが同じSUVでたとえると、トヨタのヤリスクロスやホンダのヴェゼルなどの、コンパクトSUVというカテゴリーになるだろうか。同じくスズキのフロンクスと比べるとe ビターラのほうが少し大きい。
いずれにしても、街乗りやデイリーユースでも非常に使いやすいカテゴリーだ。


スタイリングについては、アーバンを標榜するように、流麗なクーペスタイルSUVにも近いものがある。ただBEVに多く見られる、ヌルっとしてシームレスな曲線の、いわゆる近未来的なデザインではなく、むしろ正統派SUVらしいデザインになっているのが印象的だ。
実際、デザイン担当者いわく「SUVっぽさを8:BEVっぽさは2で考えた」とのこと。普段の街乗りでも、フィールドでSUVっぽくも使ってほしいという意図を込めたそうだ。
デザインについては好みによるところが大きいと思うが、筆者個人としては、BEVにしてこの正統派SUVらしいデザインは、とても好感が持てた。
インテリアは上質!スイッチも抜群にいい!
同じスズキのSUVであるフロンクスでも感じたが、内装はきわめて上質な印象だ。
ブラウンを基調として光沢あるブラックがあしらわれた、洗練されて落ち着いた雰囲気。また専用設計のプラットフォームによるところも大きいのだろうが、十分に広さを感じる室内空間。


またインパネ、センターコンソール含め、各種操作系が大きく、操作しやすい。特にセンターコンソール上のドライブモードなどのスイッチがすっきりしていて、かつ、大きいこと!(素晴らしい!)また、インパネのエアコンなどの操作系はトグルスイッチ。タッチパネルではなく、敢えて物理スイッチが採用されているのも、素晴らしいと思う。北欧などの寒い地域でもグローブをしたまま操作できるように設計しているとのこと。
そして、これは筆者の個人的な感覚の話になるが、スズキのクルマは、運転席で実際に操作する時、なぜか非常に操作しやすい。自然に手が伸びるような感覚がある。e ビターラでも同じことを感じた。

ラゲッジルームは、コンパクトな車格にこのスタイリングなので、当たり前だが広大というわけではない。しかし、リアシートは3分割の可倒式を採用していて、フィッシングなどアクティビティでの長尺モノの積載が可能。スズキもそういう使い方をしてほしくて3分割式にしたそうだ。
また後席が前後にスライドするため、後部座席に人を乗せつつ大きな荷物を積載できるよう、ラゲッジとのスペース調整ができ、使い勝手はよさそうだ。


EVキャンプを牽引するクルマになるかも!
また電気・充電系のコネクタは充実している。AC100V 1500W対応のコネクタがあるのは非常に高ポイント。
キャンプシーンでもこれだけの容量があると、いろんな機器が使えるだろう。SUVということもあり、まさにこれからのEVキャンプ時代を引っ張っていってくれるクルマ。そんな期待も膨らむ。

悪路走行にも注力した4WD
アウトドアユーザーにとって、BEVでありながら、2WDだけでなく4WDも用意されているのは大きなポイントだ。さらにe ビターラの4WDはそれだけにとどまらない。
搭載されている「ALLGRIP-e」というシステムが魅力的だ。前輪と後輪に2つのモーターを搭載していて、走行状況や路面状況によって駆動配分を適切に制御するのだが、特に悪路での制御が秀逸だ。
それが「トレイルモード」。たとえば雪道や泥地、くぼみにタイヤがハマって空転してしまう状況に陥ると、空転しているタイヤにはブレーキを掛け、接地しているタイヤに駆動力を集中させる。かつ、それが前・後輪の両方で起きてしまった場合でも、モーターが前後それぞれにあるので、両方とも対応できる。

また、急な上り坂で発進可能な傾斜角度が、2WDが18.5度なのに対し、その1.4倍の26.8度まで可能になるという。さらには悪路だけではない。通常の道路のカーブでも、リアタイヤの駆動力が使えるのでコーナリングの安定感が2WDより高まる。
これはあえて4WD車を選ぶ大きな理由になるのではないか。
電気自動車は不安…にもしっかり対応

特に日本では、まだまだ電気自動車というと不安要素があり、購入をためらう人も多いだろう。たとえば航続距離。スペック上のWLTCモードの値が、実際とはかけ離れていてよくわからない、などもその一つ。スズキは今回、その値の差を縮めるべく全力を注いだそうで、その差異を10~15%に抑えたとのことだ。
また電気自動車は気温が低い寒冷地が苦手という、アウトドアユースでは気になる問題。これもバッテリーを温める様々な機能を搭載。寒冷地では走行前、充電中や走行中でも温める機能でその弱点を低減している。
こうした機能が進化していけば電気自動車に対する不安も少なくなっていくのではないだろうか。
実際に走ってみた! 驚きのキビキビ感!

今回、4WDと2WDの両方に試乗することができた。
乗った直後からすぐに感じられる印象を一言で表すと「キビキビ!」という言葉になる。加速、挙動などすべてが軽快だ。ドライブモードが3種類用意されているが、スポーツモードを選択しなくてもいいと思えるくらい、エコモードでも加速に申し分ないとさえ思えるくらいだ。特に普段ガソリン車に乗っている人ならば、よりそれを感じられるだろう。アクセルの加減速にもリニアに追従する印象。そしてコーナーでは、タイヤがしっかり接地している感触があり、安定して曲がり、立ち上がっていくことに少々驚きもあった。
ハンドリング含め、2WDではさらに軽さと機敏さを感じられるが、それは乗り比べてみれば…というレベル。4WDに重いという印象は皆無だ。敢えて2つの違いを表すと「軽快感の2WD・安定感の4WD」か。購入の際に走りの面でどちらか迷う場合、e ビターラは4WDを積極的に選んでもいいと思えるクルマになっていると思う。

発売前のクルマにつき、一般公道ではなくクローズドのコースでの試乗なので、悪路走行は試せなかったが、前述の「ALLGRIP-e」の4WDの「トレイルモード」はとても気になるので、発売後に体験してみたいと思う。
動画レポートはこちら!
価格が楽しみ!ドキドキして待ちたい

欧州に比べ、日本ではBEVがまだまだ普及しにくいと言われるなか、e ビターラは
・SUVタイプで
・国産メーカーから
・手が届きやすい価格レンジ
で登場してくることに大きな意味があり、そして、とても喜ばしいと感じる。
国内では年内発売予定のe ビターラだが、個人的にいちばん注目しているのは、その価格設定だ。
BEVなので似た車格のHEV(ハイブリッド車)とは同列には語れないが、フロンクスでもそうだったように、スズキはかなりチャレンジングな価格で出してくれるのではないか、そんな期待がある(※別に圧をかけるつもりではない 笑)。
もちろん今の日本では購入に際し、BEVはBEVだけで検討するのが主流で、HV車と比較検討するというユーザーはまだ多くないのかもしれない。しかしこのe ビターラの価格設定によっては、同クラスのHV車と同列で比較検討することが可能になるかもしれない。そうなると日本での電気自動車の立ち位置に、大きな風穴を空ける可能性もある気がしている。
実際には低価格化はきわめて困難で非現実的だろう。けれど、思うだけなら勝手なので、ドキドキして発売を待ちたいと思っている。楽しみでならない(※圧をかけているつもりはない 笑)。
試乗して率直に「クルマとして素性が良いな」と感じた。そして特に4WD車の素晴らしさが強く印象に残った。アウトドア志向のクルマ選びに、ついに電気自動車が本格的に名乗りを上げる、そんなフェイズの到来を予感させるものがあった。
●e ビターラ(e VITARA)主要諸元(※プロトタイプのもの)
- 全長✕全幅✕全高/4275✕1800✕640mm
- 車両重量/1700〜1890kg
- 最小回転半径/5.2m
- 最低地上高/185mm
- 駆動方式/2WD・4WD
- 電池容量/61kWh・49 kWh
- 乗車定員/5名
※内容はすべて発売前のプロトタイプのものです。
スズキ 新型「e ビターラ」専用サイト
https://www.suzuki.co.jp/car/evitara
写真/中里慎一郎、編集部、スズキ自動車