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  「火を焚きなさい……」美しく尊い“日常”を生きた詩人・山尾三省

「火を焚きなさい……」美しく尊い“日常”を生きた詩人・山尾三省

雑誌『TRANSIT』の元副編集長である池尾さん。現在は、京都在住のフリーランスとして活躍中です。これまで旅について考えてきた池尾さん(しかし、鼻炎持ち&虫に弱いので旅スキルは低め)が、本を通じて旅を見直します。

自粛要請が解かれた頃から我が家の定番になっているのが、週末のキャンプだ。まだ在宅勤務が続く夫は思う存分に外の世界を満喫しているし、やんちゃ盛りの娘は身体全身を使って走り周っている。私といえば、夕飯が落ち着いた頃合いを見て始める焚き火が一番の楽しみ。個人的にキャンプのハイライトは焚き火だと思っている。頭を空っぽにして、揺らめく炎の姿をただじっと追うだけで安らげるし、徐々に燃え移る薪が織りなす造形にも見惚れてしまう。

そんな近頃、高まる焚き火への思いから、数年ぶりにとある詩を読み返しくなり、手にとったのが本書だ。

詩人・山尾三省の生誕80年を記念して2018年に刊行された詩文集。タイトルになっている『火を焚きなさい』を含む48篇の詩、4篇の散文作品に加えて、詩からのインスピレーションで生まれたnakabanの漫画や早川ユミによる解説が収録されていて、三省の代表作とその世界観を一度に味わえる。ざらついた手触りの紙に濃緑という装丁も、古いマッチ箱を想起させるようで懐かしい。

山に夕闇がせまる
子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい
(『火を焚きなさい』より)

ここでいう「火」とはどんな火だろう。竃の火かもしれないし、囲炉裏の火、五右衛門風呂の火かもしれない。いずれにせよ、「遊びをやめて、しなさい」と言っているくらいなのだから暮らしに関わる火というのは明らかだ。

今は調理も入浴もスイッチ一つでできる時代だけれど、かつて人間はそれら全てを火に頼っていた。逆に言うと、火を焚けなければ人間らしい暮らしは不可能だった。寒い日も暗い夜も、家族は火のもとに集まることで暖をとり、空腹を満たし、孤独を癒し、命をつないできた。

火を焚く行為は、現代に生きる私たちが、人間の根源的な部分に再び近づくことと同義だ。それと同じで、山尾三省の詩を読むこと自体が、その儀式のように思える。

山尾三省は家族で屋久島に住み、島の海と森に生きた詩人。百姓としての日々につぶさに向き合うかたわら、土が、空が、草が、花が、虫が、この世界がいかに生命に溢れたかけがえのないものであるかを、ことばにしてきた。詩に写しとられた風景は、日々の畑仕事や家族との食卓、妻との談笑などの極めて平凡な日常ばかり。そういった些細な出来事一つ一つに彼の心は微細に反応し、その感情を丁寧に紡ぎだしてきた。そこに浮かぶのは、美しく尊いものとしての日常だ。

彼の生前のインタビューの中にこんなものがある。

「自分が自分自身でありながら聖なるものに触れられる。そういう世界をずっと探し続けている」と。古来の日本人のようなアニミズムの世界観で生きる彼にとっては、日常にこそカミがいて、日常こそ美しいものだ。

だからタイトルだけを見て、この本を、非日常的な冒険へ誘うものだと思ってしまってはいけない。読後は、荒野を目指したくなるどころか、「今晩はろうそくの明かりだけで過ごしてみようか」なんて気分になってくるのが本書だ。

自分の喜びによって自分が変わり、世界も変わる。本書でそれに気づいた後は、見える景色の解像度がぐんと上がっていることに気づくかもしれない。ベランダに張られた蜘蛛の糸の精巧なこと、雨の降り始めの地面から立ち上る香り、路上で戯れる二匹の蝶の可憐な姿……。いつもの散歩コースにも、実は一朝一夕には味わい尽くせない喜びが潜んでいる。

(書名)
『火を焚きなさい』
山尾三省・著 早川ユミ・解説 nakaban/漫画
野草社

TEXT / 池尾優(編集者)
この記事は、日常・非日常問わず、暮らしが豊かになるようなアイデアを提案するメディア『日非日非日日(にちひにちひにちにち)』からの転載となります。


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