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自分で採った木が“何か”に変わる獲得感「スーパー生木ラボ」鈴木さんに聞くグリーンウッドワークの魅力

2021.12.24

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キャンプの醍醐味でもある野外遊び。一度フィールドにとび出てしまえば、そこに「子育て」は要らず、子どもは遊びを介して自ら育つもの。そんな「子育ち」をテーマに、毎回さまざまなゲストをお呼びする連載。

今回は、グリーンウッドワークと呼ばれる生木を使った木工の魅力を発信する「スーパー生木ラボ」の鈴木孝平さんにご登場いただきます。滋賀県の山間部に拠点を構え、木工に使う木は自分で切り出しから行うこともある、という鈴木さん。そうした山の整備とも一続きになった、グリーンウッドワークの魅力について伺いました。

滋賀県米原市の里山を拠点に、グリーンウッドワークのワークショップや普及に取り組んでいる鈴木さん。ワークショップは大人も子どもも楽しめる内容で、ご家族で参加される方も多いそうです。

スーパー生木ラボHP

生木木工の醍醐味

――生木を使った木工ということですが、通常の木工と違うのはどんなところですか?

鈴木さん:やっぱり一番は「獲得感がある」ことですかね。生木を使うので、極端に言うと、目の前にある木でもすぐに使えます。僕のワークショップでは、山から木を切り出すところから始めるのですが、さっきまでそこに生えていた木が自分の手によって新たな「何か」になるところに、大きな獲得感を得られます。例えば、自分で釣った魚をその場で捌いて食べると格別に美味しいですよね。それと同じです。

――確かに、材料の調達から行うので、完成した時には大きな自信にもなりそうです。

鈴木さん:過去に小学2年生の男の子を連れて連続講座に参加していた家族がいました。その子が自宅で作ったというルアーを持ってきて「これで釣れたよ!」と、嬉しそうに見せてくれたんです。1本の木の棒からこんなものができた!という経験は、子どもにとっても衝撃的な発見になるでしょうね。

――木を削るのって地道な作業ですよね。根気が要るので、子供は飽きてしまうのでは?と思っていました。

鈴木さん:好きな子は没頭しますね。「うちの子いつもは集中力ないけれど、今日はよくお箸を作れた」と驚く親御さんもいます。生木を削ると良い香りがしてリラックス効果があることもわかっていますし、無心になれるという人は多いです。

――建築資材や家具がそうであるように、そもそも木は数年間乾燥させてから使うものだと思っていました。乾燥していない木を使うと、歪んでしまうのではと思うのですが。

鈴木さん:歪みというのは、水分が抜ける過程で材が動く現象です。生木を使うので多少は歪みますが、木取り(木のどの部分を使うか)を工夫したり、適度な厚みを取るように心がけるなど、最低限のルールを守れば、大きな歪みは防げますよ。ただ生木が好きな人には、一点ものの特別感が好き、という人が多く、歪みを一つの個性として捉えているようです。

――こうしていくつかを見比べると、ひとつひとつの表情が異なっていて、愛らしく思えてきますね。

鈴木さん:そもそも僕は、木は乾燥していないと使えない、という解釈は間違っていると思っていて。日本では明治頃から人工乾燥の機械が広まり、徐々に生木が販売されなくなりました。でもそれまでは、生木の木工は各地で当たり前のように行われていたんです。例えば、岐阜の飛騨高山では朴の生木を使って木じゃくしが、石川県では栗の木から我谷盆という四角いお盆が作られてきました。北海道では、古くよりアイヌの人びとも生木で生活道具を作ってきました。生木木工は日本人の暮らしの一部だったものなのに、いまでは暮らしから遠ざかっているのがもったいないことです。

――生木木工が日本各地で行われていたとは知りませんでした。そんな想いもあって、グリーンウッドワークを広めているんですね。

キャンプ場でできるグリーンウッドワーク

――キャンプ場などの木々に囲まれた環境では、子どもは落ちている枝や棒が大好き。これらを使って何か作れたら楽しいですが、特別な道具を持っていないと難しいでしょうか?

鈴木さん:薪を切る時に使うナイフやノコギリがあれば大丈夫ですよ。例えば、輪切りにした丸太を適当に小さく切れば「丸太のパズル」になりますし、太めの幹や枝を輪切りにしたものを多数用意すれば「棒の積み木」ができます。最近では、河原の石を積み上げる「バランシング」が密かなブームですが、同じように積み木をどこまで積み上げられるか競うのも良いですよね。ナイフが使える年齢のお子さんなら、枝の先を削って顔をこしらえて「棒人形」を作るのも楽しいです。あえて樹皮を残して髪の毛や洋服のように見せたり。樹皮を自由にデザインできるのも、グリーンウッドワークの醍醐味です。

――どれも計測や下書きが要らず、フリーハンドで気ままに作れるのが良いですね!

鈴木さん:もしもドリルがあると、できることが一気に広がります。輪切りにした枝にドリルで芯を抜いて、その穴をナイフで削り広げればウッドバングルができます。輪切りにした枝にドリルで芯を抜いたものをいくつも作って、穴に紐を通せばウッドビーズのネックレスの完成です。電動ドリルがあると楽ですが、手回しドリルでも問題なくできますよ。かさばらず電源も要らないので外出時には最適です。

人と山の距離を縮めたい

――もともとどうしてグリーンウッドワークを始めたのでしょうか?

鈴木さん:もともと京都で会社員として働いていましたが、ひょんなことから仕事を辞め、地域おこし協力隊として米原市に移住しました。そこで触れたのが、自伐型林業の世界です。地域住民が地域の山の手入れをし、作業料の代りに間伐した木をいただく、という仕組みです。林業地では原木を出荷し販売する仕組みがありますが、米原のような林業地でない場所では原木を売っても需要がないため生業にしづらい。そこで役立つのがこの仕組みです。自伐型林業に関わるようになり、生木からスプーンを作ったのがきっかけで、グリーンウッドワークの世界にのめり込んでいきました。

――ワークショップで木を伐採するところからお伝えしているのには、どんな想いがありますか?

鈴木さん:昔から人が暮らしてきた里山では、山は燃料などの生活資源を調達するための場所でした。必要な分の木を切り出したり、草刈りをしたり、間伐をしたり。住民が手を加えることで、里山の環境が保たれてきたのです。放置される山が多い今、こうした山と人とのより良い関係に興味を持ってもらえたらという思いでワークショップを開いています。今はネットショップなどのオンラインツールが充実しているので、生木木工を副業レベルでも始めやすい時代。こうした山間部の暮らしや山の仕事に興味を持つ人が増えたら、地方活性化にもつながるように思います。

――米原だけでなく、日本各地の山間部の課題解決にもなりますね。鈴木さんが今後、力を入れたいのはどんなことですか?

鈴木さん:直近では、年間を通して学べるグリーンウッドワークの講座を始める予定です。加えて、都市部に住む人でも気軽にグリーンウッドワークを始められて、スキルを高めていけるように、オンラインコンテンツやオンラインサロンなどにも力を入れていきたいです。

執筆者プロフィール

池尾 優
編集者/ライター。1984年生まれ。タイで現地情報誌の編集に携わった後、2010年より雑誌『TRANSIT』編集部に在籍。同誌副編集長を経て2018年に独立。京都在住。 趣味はヨガとファミリーキャンプ。あと、最近茶道をはじめました。

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